悪魔の足音


世界中で異常気象が続いておるのう。
汐碕市も耐えられぬということはないが、9 月に入っても夏並みの気温が続いておる。
皆は体調など崩しておらぬか?
これだけ暑い日が続くと、夏バテもそうとうつらそうなのじゃ。

にっくきあのやろ

おっと、そうじゃったな、前回の続きのはなしであったな。
この話は「翼をください」とその次回作両方のネタバレの話題じゃ。
賢者会議の話は前回したと思うのじゃが、その席に、なんとあの憎き稲置涼子がおったのじゃ! いけしゃぁしゃぁと椅子に座ってすましておったわ。そもそも彼奴は人間ではない。人間ではない者が賢者会議に出ること自体がおかしいのじゃ!
会議そのものがそれはそれは緊迫しておったぞ。
誰しもがあの場で彼奴を殺したいと思ったことじゃろうのう。
それほどまでに彼奴は彼奴の事情を知る人間からは憎まれておるのじゃ。じゃが残念ながら、彼奴に賛同する人間もおるのじゃ。彼奴の破壊的な精神に酔い、彼奴の渾沌の美しさに魅入られてしまったのじゃ。

それに、妾たち賢者どうしでは戦ってはならぬという協定があるのじゃ。それはな、妾たちの力は強力すぎるからじゃ。妾たちが本気で殺し合いをしたら……想像するだけでも恐ろしいのじゃ。じゃから、たとえ稲置が妾の手の届く場所にいたとしても、手を出すことは許されぬのじゃ。

しかしあろう事か、彼奴は妾に話しかけて来おったのじゃ。なんと言ったと思う? 「汐碕にいないからといって油断するな」と、妾に警告してきたのじゃ。妾は何かあると思い、汐碕市の中に、彼奴の息のかかった者がいないか探したのじゃ。
血眼になるという言葉が相応しいくらいに、じゃ。妾は必死じゃった。そしてついに、ついに見つけてしまったのじゃ、彼奴の息のかかった者がおると言うことを。いつからかそうであったのか、妾は解らぬ。解らぬが、しかし事もあろうに、其奴はあの天野光人に近い場所におるのじゃ。

二階堂、二階堂静香じゃ。彼奴は稲置涼子の息がかかっておる。しかも相変わらず光人に近い。そもそも天翔学園の生徒会と図書委員会は切っても切れぬ仲なのじゃ。図書委員会の前身は生徒会の記録(書記)・監査部門が独立してできあがったのじゃ。かつては知を管理する者として、生徒会は校内の図書に関しても占有しておったのじゃ。

あぁ、心配じゃ……光人のそばに稲置の部下がいようとは……何か胸騒ぎがするのじゃ。そしてその胸騒ぎは妾の気のせいだけではなかったのじゃ!
おっと、また執事が呼んでおる。続きはまた次回に話すことにするのじゃ。

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