急に涼しくなったのう。
街では秋物がようやく売れ始めたようじゃ。そうそう、我が汐碕市ではハロウィン・イベントも目白押しじゃ。それに来週の 22 日は中秋の名月じゃな。汐碕市は雲の上にある故、月もきれいに見えるぞよ?
さてと、稲置と出会った時の続きであったな。
彼奴は妾に警告しにわざわざ話しかけてきたのじゃが、そのときに使い魔を一匹連れておったのじゃ。ありふれた灰色の猫じゃな。もっとも彼奴の使い魔の事じゃ、秘められた力を持ってはおろうがの。
そしてその使い魔を見たとき、妾はピンと来たのじゃ。そして稲置の、天野光人に近付くための周到なまでの仕掛けにようやく気付いたというわけじゃ。
まったく、恐ろしいことじゃ。
結局の所、この街から稲置の脅威は過ぎ去っておらぬと言うことじゃ。
天野光人には天野光人を欲しているそれぞれの勢力が集まってしまっているのじゃ。二階堂に朝日奈に……。
ん? 妾の手の者がおらぬじゃと? 心配するでない、妾が信頼しておる人間が一人、天野光人のそばにはおる。じゃがその前に、我がホラント家とこの土地、汐碕市との関係を説明せねばならぬな。それは次回話すとするのじゃ。
気をつけなければならぬのは、稲置がまだこの街に仕掛けをしている可能性があると言うことなのじゃ。市長としてそれは断固見つけ出し、これ以上稲置の思い通りに事が進まぬようにせねばならぬのじゃ……。
あぁ、憂鬱じゃ……。