しばらくネタバレが続くのじゃ。
今日は昔の探偵部について話すとするかのう。
探偵部を作ったのはもちろん熾永 豊じゃの。あの当時……もう 100 年以上前にもなるが……魔というものはそう特別なものではなかったのじゃ。いや、それはちょっと語弊があるのう。魔というようなものがあったとしても、不思議に思うものが少なかった……という表現が正しいかのう。
つまりじゃな、摩訶不思議なことが起きた所でそれは受け入れられておったのじゃ。その理由は簡単じゃ、あの当時は科学も魔もそう境はなかったからのう。それに今よりも科学が浸透しておらなんだ。
じゃが今は違う。何か不思議なことがあればそれを疑問に思い、それが非科学的なものであれば怪しむという人間の方が圧倒的に多いじゃろう。じゃから、魔というものは使えなくなったのじゃな。
いや、それを利用して、魔が隠されたと言っても良いかもしれぬ。
探偵部の活動を禁止した学園長も、ひょっとしたら魔を否定したのではなくて、魔を隠したいからそうしたのかもしれぬのう。
熾永 豊は自分の過ちを隠すためと、光人を人間として生きさせるために探偵部を作ったわけじゃが、この汐碕の地を魑魅魍魎から守るという役目も充分果たしておったぞよ。
熾永は学園内におる霊感の強いものを集めて、訓練していたようじゃの。そうして魔が使える生徒ができはじめ、彼らはある者は官僚へ、ある者は軍人へとなっていったのう。じゃが残念ながらあまり良い一生は送らなかったと記憶しておる。国に利用された者もおれば、逆に迫害された者もおる。子孫を残すこともなく、の。
つくづく、熾永という女は不幸な人間を作りおる。困ったものじゃ。
この辺りの話は、大正少年少女探偵奇譚として聖天翔学園の図書館に眠っておるはずじゃ。大正時代にな、この汐碕市を恐怖のどん底に陥れたという、怪人二十……おっと、また執事が呼んでおる。まったく……今日の話はここまでじゃ。