急に涼しくなったのう。
街では秋物がようやく売れ始めたようじゃ。そうそう、我が汐碕市ではハロウィン・イベントも目白押しじゃ。それに来週の 22 日は中秋の名月じゃな。汐碕市は雲の上にある故、月もきれいに見えるぞよ?

ペリドット

さてと、稲置と出会った時の続きであったな。
彼奴は妾に警告しにわざわざ話しかけてきたのじゃが、そのときに使い魔を一匹連れておったのじゃ。ありふれた灰色の猫じゃな。もっとも彼奴の使い魔の事じゃ、秘められた力を持ってはおろうがの。
そしてその使い魔を見たとき、妾はピンと来たのじゃ。そして稲置の、天野光人に近付くための周到なまでの仕掛けにようやく気付いたというわけじゃ。
まったく、恐ろしいことじゃ。
結局の所、この街から稲置の脅威は過ぎ去っておらぬと言うことじゃ。
天野光人には天野光人を欲しているそれぞれの勢力が集まってしまっているのじゃ。二階堂に朝日奈に……。

ん? 妾の手の者がおらぬじゃと? 心配するでない、妾が信頼しておる人間が一人、天野光人のそばにはおる。じゃがその前に、我がホラント家とこの土地、汐碕市との関係を説明せねばならぬな。それは次回話すとするのじゃ。

気をつけなければならぬのは、稲置がまだこの街に仕掛けをしている可能性があると言うことなのじゃ。市長としてそれは断固見つけ出し、これ以上稲置の思い通りに事が進まぬようにせねばならぬのじゃ……。
あぁ、憂鬱じゃ……。


世界中で異常気象が続いておるのう。
汐碕市も耐えられぬということはないが、9 月に入っても夏並みの気温が続いておる。
皆は体調など崩しておらぬか?
これだけ暑い日が続くと、夏バテもそうとうつらそうなのじゃ。

にっくきあのやろ

おっと、そうじゃったな、前回の続きのはなしであったな。
この話は「翼をください」とその次回作両方のネタバレの話題じゃ。
賢者会議の話は前回したと思うのじゃが、その席に、なんとあの憎き稲置涼子がおったのじゃ! いけしゃぁしゃぁと椅子に座ってすましておったわ。そもそも彼奴は人間ではない。人間ではない者が賢者会議に出ること自体がおかしいのじゃ!
会議そのものがそれはそれは緊迫しておったぞ。
誰しもがあの場で彼奴を殺したいと思ったことじゃろうのう。
それほどまでに彼奴は彼奴の事情を知る人間からは憎まれておるのじゃ。じゃが残念ながら、彼奴に賛同する人間もおるのじゃ。彼奴の破壊的な精神に酔い、彼奴の渾沌の美しさに魅入られてしまったのじゃ。

それに、妾たち賢者どうしでは戦ってはならぬという協定があるのじゃ。それはな、妾たちの力は強力すぎるからじゃ。妾たちが本気で殺し合いをしたら……想像するだけでも恐ろしいのじゃ。じゃから、たとえ稲置が妾の手の届く場所にいたとしても、手を出すことは許されぬのじゃ。

しかしあろう事か、彼奴は妾に話しかけて来おったのじゃ。なんと言ったと思う? 「汐碕にいないからといって油断するな」と、妾に警告してきたのじゃ。妾は何かあると思い、汐碕市の中に、彼奴の息のかかった者がいないか探したのじゃ。
血眼になるという言葉が相応しいくらいに、じゃ。妾は必死じゃった。そしてついに、ついに見つけてしまったのじゃ、彼奴の息のかかった者がおると言うことを。いつからかそうであったのか、妾は解らぬ。解らぬが、しかし事もあろうに、其奴はあの天野光人に近い場所におるのじゃ。

二階堂、二階堂静香じゃ。彼奴は稲置涼子の息がかかっておる。しかも相変わらず光人に近い。そもそも天翔学園の生徒会と図書委員会は切っても切れぬ仲なのじゃ。図書委員会の前身は生徒会の記録(書記)・監査部門が独立してできあがったのじゃ。かつては知を管理する者として、生徒会は校内の図書に関しても占有しておったのじゃ。

あぁ、心配じゃ……光人のそばに稲置の部下がいようとは……何か胸騒ぎがするのじゃ。そしてその胸騒ぎは妾の気のせいだけではなかったのじゃ!
おっと、また執事が呼んでおる。続きはまた次回に話すことにするのじゃ。


ずいぶんと間があいてしまったのう、元気にしておるか?
妾は元気じゃ。
8 月はな、バカンスに行っておったのじゃ。とはいえ、半分里帰りみたいなものじゃがな。ホラント家は今で言うドイツ出身でな。もっとも国をあとにした頃、ドイツという国はまだなかったがの。
夏になると賢者会議というものが、そこで行われるのじゃ。賢者というのはこの場合、人間の枠を飛び越えてしまった者達のことをいうのじゃ。妾や……そうじゃのう、神宮司もいずれはそうなろうの。人間の枠を超えたというのは、例えば寿命がなかったり、人とは思えぬ力が使えたりなど、さまざまじゃな。

この地球に人間は 60 億以上いるそうじゃが、賢者はそのなかでも数えるほどしかおらぬぞよ。それだけ賢者になることは大変と言うことじゃ。

さて、妾が日本を離れておったあいだ、日本は猛暑で大変だったそうじゃのう。おかげで我が市が避暑地として大盛況だったそうでな、ホテルなどは連日満室だったそうじゃ。不況で街全体もいまいち活気が足りなかったからのう、暑さが思わぬ需要を呼んだようじゃ。

というわけで今日は我が汐碕市の物価の話をするぞよ。
汐碕市は空に浮いていることもあってな、どうしても物流コストが高くなってしまうのじゃ。従って物価は実は割高なのじゃ。汐碕市の中で作れる物は物価はかわらんのじゃが、大人の事情もあってな、それらも高めに設定されておるのじゃ。
よく山の上のジュースの値段がたかかったりするじゃろ? アレと同じじゃな。つまり汐碕市は山頂の値段というわけじゃ。さらに天候などで物流が止まってしまうことがあったりするのじゃ。そうなるとさらに物価が上がってしまう。そういうことがないように一応、各品物には上限の値段というものが決まっておるのじゃ。
この上限は東京の物価を基準に決めるのじゃ。そしてその上限を超えるようなことがあった場合は、その分を我がホラント家が補填するようになっておるのじゃ。
もっとも補填されるのは生活必需品だけじゃがの。趣向品には補填はせぬのじゃ。

そんなわけで、実は経済的には汐碕市はちょっと暮らしづらいかもしれぬのう……おっと、市長がそんなことを言ってはいかんな。

ところで、じゃ!
賢者会議の中に、ムカつくヤツがおったのじゃ。
あの憎き……!! ええい、名前を思い出しただけでも怒りがこみ上げてくる。しかもすました顔で妾に堂々と話しかけてきおったのじゃ! ま、まぁ、この話は、次に話すとするぞよ。

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