一週空いてしまったのう。
すまぬすまぬ。

さて、今回はちと天使の話をするぞよ?
いあ、あの憎っくき稲置にも当てはまる話じゃがな。
あやつらは当然人間ではない。じゃからいろいろと人間と違う所があるのじゃ。まぁそれは当然じゃの。魔が人間よりも容易に使えたり、人の心が読めたり──いや、これはちょっと語弊があるな。人の欲するものがわかったり──という方が正確じゃな。
あとは寿命がなかったり、通常の武器では傷がつかなかったりといろいろじゃ。じゃがそんなことは誰しもが想像がつくことじゃな。天使と聞いて、人間と同じだったらその方が夢がないというものじゃ。

ぐっすりやすら

今回は天使たちの意外な人間との違いを教えるぞよ?
それはな、天使は寝なくて良いのじゃ。ふふふ、まぁこれも当たり前のことじゃな。あの稲置も熾永も睡眠というものは不要じゃ。そして、光人たちもな。当然じゃな。彼奴らの身体の仕組みがすでに動物ではないからの。
じゃが光人たちはまだ人間の常識が染みついておる。自然と眠くなり、人間と同じ体内時計を有してしまっているようじゃ。水帆と水翼くらいじゃのう、あの中で睡眠を取らなくて良いのを知っておるのは。じゃがあの二人はそもそも寝ることが好きなようじゃ。
やすらは少しその自覚が芽生えはじめているのじゃが……彼奴も睡眠が好きな性格からして、当分は睡眠のある生活をするじゃろうのう。

ちなみに人間の場合、人生の 1/3 が睡眠と言われておる。60 年生きれば、そのうちの 20 年は寝ておるわけじゃ。そうやってみるとなんとも睡眠によって人生を損しているように見えるが、睡眠は人生にとっても重要な体験じゃ。決して無駄なことはないのじゃ。

ところで妾じゃが、妾も睡眠が必要じゃ。
それはつまり妾も元は人間じゃからなのじゃ。どうあがいても、天使や悪魔は超えられぬのかもしれぬのう。


しばらくネタバレが続くのじゃ。
今日は昔の探偵部について話すとするかのう。

探偵部室

探偵部を作ったのはもちろん熾永 豊じゃの。あの当時……もう 100 年以上前にもなるが……魔というものはそう特別なものではなかったのじゃ。いや、それはちょっと語弊があるのう。魔というようなものがあったとしても、不思議に思うものが少なかった……という表現が正しいかのう。
つまりじゃな、摩訶不思議なことが起きた所でそれは受け入れられておったのじゃ。その理由は簡単じゃ、あの当時は科学も魔もそう境はなかったからのう。それに今よりも科学が浸透しておらなんだ。
じゃが今は違う。何か不思議なことがあればそれを疑問に思い、それが非科学的なものであれば怪しむという人間の方が圧倒的に多いじゃろう。じゃから、魔というものは使えなくなったのじゃな。
いや、それを利用して、魔が隠されたと言っても良いかもしれぬ。

探偵部の活動を禁止した学園長も、ひょっとしたら魔を否定したのではなくて、魔を隠したいからそうしたのかもしれぬのう。

熾永 豊は自分の過ちを隠すためと、光人を人間として生きさせるために探偵部を作ったわけじゃが、この汐碕の地を魑魅魍魎から守るという役目も充分果たしておったぞよ。
熾永は学園内におる霊感の強いものを集めて、訓練していたようじゃの。そうして魔が使える生徒ができはじめ、彼らはある者は官僚へ、ある者は軍人へとなっていったのう。じゃが残念ながらあまり良い一生は送らなかったと記憶しておる。国に利用された者もおれば、逆に迫害された者もおる。子孫を残すこともなく、の。
つくづく、熾永という女は不幸な人間を作りおる。困ったものじゃ。

この辺りの話は、大正少年少女探偵奇譚として聖天翔学園の図書館に眠っておるはずじゃ。大正時代にな、この汐碕市を恐怖のどん底に陥れたという、怪人二十……おっと、また執事が呼んでおる。まったく……今日の話はここまでじゃ。


下界では暑い日が続くようになったのう。もうすぐ梅雨じゃな。我が汐碕市はまだまだ涼しいぞよ? 梅雨はないのじゃが、湿気は残念ながら一年を通して多めじゃ。雲の中にあることもおおいからのう、仕方のないことじゃな。

さて、今日はちょっと外の世界に目を向けてみるぞよ?
実は宙に浮いている島というのはこの汐碕市だけではないのじゃ。この地球上にはいくつかの浮いている島があるのじゃ。まだ未発見のもあるのではないかと言われておる。
じゃがほとんどがものすごく小さくて人が住めるようなものではないのじゃな。人が住んでおるような大きな浮島は現在確認されておるだけで三つしかないのじゃ。

どの浮島も未だに浮いている仕組みは謎じゃ。最近では「気圧の層説」というものも提唱されておる。実はどの浮島も同じ高度に浮いておるのじゃ! そしてそれを境に気圧の層ができておるのじゃ。浮島のあるところより上と下でくっきりと気圧が異なっておるのじゃな。浮島はこの層の境目に浮いていることが解っておる。
なぜ気圧がだんだんと薄くならずにくっきりと別れておるのかは不明じゃが、汐碕市が浮いているのと何か関係があるのではないかと言われておる。じゃが浮島が何らかの気圧の変化を起こしているのではないかと疑っておる科学者もおるようじゃ。
そこで科学者たちが疑っておるのが、絶対に晴れぬ雲じゃ。天気図とは無関係に漂い続ける台風のような雲の塊がいくつか観測されておる。あれらの雲も中心には汐碕市のような浮島があるのではないかと推測されておるのじゃ! この雲の名前を竜の……おっと執事が呼んでおる。今日の話はここまでじゃ。

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